ベトナムで拠点を運営する日系企業にとって、 休暇制度の正確な理解 は労務管理の基本です。
有給休暇の付与日数、未消化時の取扱い、祝日の振替ルール、慶弔休暇の有給・無給の区分など、 日本とは異なるルール が多く存在します。
本記事では、ベトナム労働法2019(Law No. 45/2019/QH14)に基づく 休暇制度の全体像を、実務目線で一覧形式で解説 します。
年次有給休暇(Annual Leave)
ベトナムでは、同一の使用者のもとで 12ヶ月以上勤務 した従業員に年次有給休暇が付与されます(Article 113)。
基本付与日数
| 労働条件 | 年次有給日数 |
|---|---|
| 通常条件 | 12労働日 |
| 未成年者、障害者、危険・有害業務従事者 | 14労働日 |
| 特別危険・有害業務従事者 | 16労働日 |
勤続加算(Article 114)
同一の使用者のもとで 5年勤続するごとに1日 が加算されます。
- 勤続5年:12 + 1 = 13日
- 勤続10年:12 + 2 = 14日
- 勤続15年:12 + 3 = 15日
12ヶ月未満の場合の按分計算
勤続12ヶ月未満の従業員には、実労働月数に応じた 按分付与 が行われます(Decree 145/2020/ND-CP Article 65)。
計算式:(基本付与日数 ÷ 12) × 実労働月数
月の算定基準:ある月の実労働日数と承認済み休暇日数の合計が、所定労働日数の50%以上であれば1ヶ月として算定
未消化有給の取扱い
| 状況 | 取扱い |
|---|---|
| 在職中の繰越 | 労使間の合意があれば可能。最大3年分を合算して取得可(Article 113, Clause 4) |
| 在職中の買取(Cash-out) | 法的義務なし。使用者に支払い義務はない |
| 退職・解雇時 | 未消化分を金銭補償する義務あり。退職後14労働日以内に支払い(Article 48)。特別な場合は最大30日まで延長可能 |
- 日本のような「2年で時効消滅」のルールはベトナムにはない。就業規則で繰越ルールを明確に定めることが重要
- 在職中の有給買取義務がないため、「有給を消化せず金銭で欲しい」という要求に法的根拠はない
祝日・公休日(2026年)
ベトナムの法定祝日は、2026年の文化の日の追加により 年間12日 となりました(Article 112 + 政治局決議 No.80-NQ/TW)。
| 祝日 | 法定日数 | 2026年の日付 |
|---|---|---|
| 元旦 | 1日 | 1月1日(木) |
| テト(旧正月) | 5日 | 2月14日(土)〜22日(日)※9連休 |
| フン王記念日 | 1日 | 4月26日(日)→ 27日(月)振替 |
| 南部解放記念日 | 1日 | 4月30日(木) |
| メーデー | 1日 | 5月1日(金) |
| 建国記念日 | 2日 | 9月1日(火)〜2日(水)※5連休 |
| 文化の日(新設) | 1日 | 11月24日(火) |
- 祝日が週休日と重なった場合、翌営業日に振替休日が付与される(Article 112, Clause 3)
- テトの日程は使用者が3つの配置パターンから選択。30日前までに従業員に通知する義務あり
- 祝日に出勤させた場合、通常賃金の300%以上の支払いが必要
特別休暇(慶弔休暇)
従業員は以下の事由に該当する場合、 特別休暇 を取得できます(Article 115)。
有給の特別休暇
| 事由 | 日数 |
|---|---|
| 本人の結婚 | 3労働日 |
| 子供の結婚 | 1労働日 |
| 実父母・養父母・義父母の死亡 | 3労働日 |
| 配偶者の死亡 | 3労働日 |
| 実子・養子の死亡 | 3労働日 |
無給の特別休暇
| 事由 | 日数 |
|---|---|
| 祖父母(父方・母方)の死亡 | 1労働日 |
| 実の兄弟姉妹の死亡 | 1労働日 |
| 父母の結婚(再婚等) | 1労働日 |
| 兄弟姉妹の結婚 | 1労働日 |
- 日本では祖父母・兄弟の忌引も有給とする企業が多いが、ベトナム法では無給。福利厚生として有給にする企業もあるが法的義務ではない
病気休暇(Sick Leave)
病気休暇の給与は使用者ではなく 社会保険機関(VSS) が支払います。
給付日数は社会保険の加入年数によって異なります(社会保険法2014 Article 26)。
| 社会保険加入年数 | 通常条件 | 危険・有害業務 | 給付率 |
|---|---|---|---|
| 15年未満 | 30日/年 | 40日/年 | 75% |
| 15年〜30年未満 | 40日/年 | 50日/年 | 75% |
| 30年以上 | 60日/年 | 70日/年 | 75% |
長期療養が必要な疾病の場合は年間最大 180日 まで給付されます。
また、7歳未満の子供の看護のために休む場合、3歳未満は年20日、3歳〜7歳未満は年15日が給付対象です。
産休・育休
女性の産休(Maternity Leave)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 期間 | 6ヶ月(180日) |
| 産前休暇 | 最大2ヶ月を出産前に取得可能 |
| 産後最低期間 | 出産後最低4ヶ月は休暇を取得 |
| 多胎出産 | 2人目以降の子供1人につき+30日 |
| 給付率 | 社会保険料算定基礎給与の100% |
| 支払元 | 社会保険機関(使用者の直接負担なし) |
男性の育休(配偶者出産時休暇)
| 出産の状況 | 休暇日数 |
|---|---|
| 通常分娩(1人) | 5労働日 |
| 帝王切開(1人) | 7労働日 |
| 双子(通常分娩) | 10労働日 |
| 双子(帝王切開) | 14労働日 |
2025年7月施行の社会保険法改正により、取得可能期間が出産後30日から 60日以内 に延長され、分割取得も可能になりました。
日系企業がよく見落とすポイント
- 有給繰越ルールの未整備:法定の繰越期限がないため、就業規則で明確に定めないと紛争リスクがある
- 退職時の未消化有給の精算漏れ:退職後14労働日以内に金銭補償する義務がある(Article 48)。忘れると労働紛争に発展しやすい
- 祖父母の忌引を有給と誤解:ベトナム法では祖父母・兄弟の死亡は無給休暇。日本の慣行と混同しやすい
- 病気休暇の負担者の誤解:病気休暇の給与は社会保険機関が支払う。使用者負担と誤解して二重払いしているケースがある
- 産休6ヶ月の影響の過小評価:アジア最長水準。人員計画への影響を事前に考慮すべき
まとめ
ベトナムの休暇制度は、年次有給休暇・祝日・特別休暇・病気休暇・産休育休と 多岐にわたり、それぞれに細かいルール があります。
特に、有給の繰越・買取ルール、慶弔休暇の有給・無給の区分、病気休暇の支払元など、 日本の制度との違い を正しく理解した上で、就業規則に反映することが重要です。
▶ 関連記事:
ベトナム労働契約書で注意すべき5つのポイント
ベトナムの残業代・深夜・休日労働の計算方法
ベトナムの社会保険加入の基準と計算方法


