ベトナム拠点を運営する日本企業にとって、 個人所得税(PIT:Personal Income Tax) は、給与計算と並んで理解が欠かせない制度です。
社会保険料や各種手当、扶養控除の扱いによって課税額が大きく変わるため、 誤った理解は税務リスクにつながります。
本記事では、ベトナムにおける PITの基本的な仕組みから 控除の考え方・計算ステップ までを、実務目線でわかりやすく解説します。
ベトナムの個人所得税(PIT)とは
PIT(Personal Income Tax)は、個人が得た所得に対して課される税金です。
ベトナムでは、給与・賞与・手当などの労働に基づく所得が主な課税対象となります。
給与計算では、毎月の源泉徴収としてPITを計算・控除し、 企業が税務当局へ納付します。
PITの課税対象となる主な所得
給与に関連する以下の所得は、原則としてPITの課税対象です。
- 基本給
- 役職手当・職務手当
- 残業代・深夜労働・休日労働の賃金
- 課税対象となる各種手当
一方、実費精算や福利厚生的な支給については、 条件を満たせば非課税となるケースがあります。
PIT計算における控除の考え方
PITは、総支給額にそのまま税率を掛けるわけではありません。
以下の控除を差し引いた課税所得に対して税率が適用されます。
① 社会保険料控除
従業員が負担する以下の社会保険料は、PIT計算時に控除されます。
- 社会保険(SI)
- 健康保険(HI)
- 失業保険(UI)
② 本人控除
ベトナムでは、納税者本人に対して月額固定の本人控除が認められています。
※ 控除額は法改正により変更される可能性があります。
③ 扶養控除
一定の条件を満たす扶養家族がいる場合、 扶養控除を適用することができます。
扶養控除を受けるには、事前登録と証憑管理が重要です。
PITの計算ステップ(実務フロー)
給与計算におけるPITは、以下の手順で算出します。
- 総支給額(課税対象所得)の確定
- 社会保険料の控除
- 本人控除・扶養控除の適用
- 課税所得の算出
- 累進税率を適用してPITを計算
ベトナムのPITは累進税率が採用されており、 所得が高くなるほど税率も高くなります。
現在の個人所得税(PIT)累進税率
ベトナムの個人所得税(PIT)は、課税所得に対して累進税率が適用されます。
以下は、月次の課税所得を基準とした現在の税率表です。
| 課税所得(月額) | 税率 |
|---|---|
| 5,000,000 VND 以下 | 5% |
| 5,000,001 ~ 10,000,000 VND | 10% |
| 10,000,001 ~ 18,000,000 VND | 15% |
| 18,000,001 ~ 32,000,000 VND | 20% |
| 32,000,001 ~ 52,000,000 VND | 25% |
| 52,000,001 ~ 80,000,000 VND | 30% |
| 80,000,000 VND 超 | 35% |
この税率は、各階層ごとに段階的に適用される点が重要です。
たとえば、課税所得が高い場合でも、全額に高税率がかかるわけではありません。
なお、控除額や税率は法改正により変更される可能性があるため、最新情報の確認が必要です。
実務でよくある注意点
- 課税・非課税手当の区分を誤る
- 扶養控除の登録漏れ・証憑不足
- 社会保険料控除の計算ミス
これらは、税務調査で指摘されやすいポイントです。
PIT法改正との関係
PITの控除額や計算ルールは、法改正により見直されることがあります。
最新の改正内容については、以下の記事もあわせて確認してください。
▶ 関連記事:ベトナム国会、個人所得税法改正を可決 ― 2026年7月1日施行
給与計算全体との関係
PITは、給与計算・残業代・手当・社会保険と密接に関係しています。
制度を部分的に理解するのではなく、 給与計算全体の流れとして整理 することが重要です。
▶ 関連記事:
ベトナム給与計算の基本ルール【完全ガイド】
ベトナムの手当と課税・社会保険の扱い
まとめ
ベトナムの個人所得税(PIT)は、 控除の仕組みと計算ステップを正しく理解することで、 過不足のない税務処理が可能になります。
給与設計・手当設計・社会保険とあわせて 一体で管理・運用 することが、税務・労務リスクを抑えるポイントです。


