2025年12月10日、ベトナム国会にて個人所得税法(改正)が可決されました。
本記事では、2026年7月1日から施行される新しい所得税制度のポイントを、日本企業のベトナム拠点向けにわかりやすく整理します。
2026年7月1日施行:ベトナム個人所得税法改正の概要
改正個人所得税法は、税率区分の見直し・家族控除額の法定化・個人事業者への新ルール・非課税所得の追加・金地金取引への課税など、ベトナムで働く従業員から個人事業主、投資家まで幅広い層に影響を与える内容となっています。
- 国会可決日:2025年12月10日
- 施行開始日:2026年7月1日
- 対象:給与所得者、個人事業主、小規模事業者、投資家、農林水産従事者など
新しい累進税率(7段階から5段階へ簡素化)
改正法では、個人の給与所得等に対する累進税率が5段階に整理されました。
特に、第2段階・第3段階の税率が引き下げられ、中間層の税負担軽減が意図されています。
| 課税所得(月額) | 新税率 |
|---|---|
| ~ 1,000万 VND | 5% |
| 1,000万 ~ 3,000万 VND | 10% |
| 3,000万 ~ 6,000万 VND | 20% |
| 6,000万 ~ 1億 VND | 30% |
| 1億 VND 超 | 35% |
これにより、旧制度に比べて税率区分がシンプルになり、給与計算ロジックの変更が求められます。
家族控除額の法定化と今後の調整
改正法では、これまで国会決議に基づいて運用されてきた家族控除額が法律上に明記されました。
- 納税者本人の控除額:月額 1,550万ドン
- 扶養家族1人あたりの控除額:月額 620万ドン
また、物価や所得水準の変化に応じて、今後も家族控除額を調整できる仕組みが盛り込まれており、
中長期的にも控除額が見直されていく可能性があります。
個人事業主・小規模事業者向けの新しい課税ルール
事業を営む世帯・個人については、売上規模に応じて非課税枠の拡大と簡易課税方式が導入されました。
- 年間収入が 2億 VND → 5億 VND に引き上げられ、この範囲は非課税所得として扱われる。
- 年間売上高 5億 VND 超~30億 VND 以下 の世帯・個人事業主について、
「収入 − 経費」による所得計算方式を新たに追加し、税率15%を適用。 - これらの事業者は、従来の「売上に対する割合」を用いた計算方法との選択が可能。
日本企業側としては、ベトナムの外注先・フリーランス・個人事業主との取引について、
「年間売上規模」や「課税区分」を確認しながら契約条件・税務処理を見直す必要があります。
非課税所得の拡大:農林水産・科学技術関連
改正法では、以下のような所得が新たに非課税所得として追加されました。
- 農作物、人工林、家畜、水産物などを直接生産する世帯・個人の所得
- 協同組合および農業協同組合連合の組合員配当
- 大規模畑作、生産林の人工林、水産物養殖に参加する農家の個人所得
- 科学技術革新業務の遂行から生じる給与所得
- 科学技術革新の成果が商品化された場合の著作権所得
研究開発やアグリビジネス分野に関連するプロジェクトを持つ企業では、
対象となる従業員やパートナーの所得区分を正しく判定することが重要になります。
ゴールドバーの譲渡所得に対する課税と新たな管理
改正法では、ゴールドバーの譲渡所得が課税対象に追加されました。
同時に、政府は「課税対象となるゴールドバーの価値の閾値」を設定し、純粋な貯蓄・保管目的の取引については課税対象から除外する方針も示しています。
この規定は、金取引の透明性向上と投機抑制、経済への資金循環の促進を目的としており、
ベトナム国内で資産運用を行う個人・投資家にも影響を及ぼす可能性があります。
日本企業・ベトナム拠点が今すぐ準備すべき4つのポイント
- 給与計算ロジックの見直し
新しい税率区分・控除額を前提に、給与計算シートやシステムを更新する必要があります。 - 就業規則・給与規程の改訂
課税対象手当・非課税手当の定義や、扶養家族の申告手続きについて、文書上の整合性を取ることが重要です。 - 外注・個人事業主との契約の棚卸し
売上規模・事業形態に応じた新ルールに基づき、源泉徴収や契約条件の見直しを検討する必要があります。 - 従業員・駐在員への説明とFAQ整備
手取り額や税負担の変化を分かりやすく説明し、不安を軽減することが大切です。
ESTはベトナム新税制に自動対応します
HAROが提供するベトナム拠点向け人事・労務システム「EST」では、今回の個人所得税法改正に合わせて以下のアップデートを予定しています。
- 新しい累進税率(5段階)の自動計算
- 家族控除額(1,550万ドン/620万ドン)の設定反映
- 個人事業主・小規模事業者向けの新課税方式への対応
制度改正のたびにExcelや社内マニュアルを作り直すのではなく、
「ベトナムの最新税制に自動で追従できる」環境を整えることが、これからの人事・労務には求められます。
ベトナム個人所得税法改正への対応や、ESTの機能について詳しく知りたい方は、お気軽にお問い合わせください。


