ベトナム拠点の給与設計において、多くの日本企業が悩むのが 「手当の扱い」です。
同じ「手当」でも、個人所得税(PIT)や社会保険(SI・HI・UI)の対象になるもの・ならないものがあり、 誤った理解は税務・労務トラブルにつながります。
本記事では、ベトナムにおける代表的な手当の種類と、 課税・社会保険上の扱いを 実務目線で整理します。
目次
ベトナムにおける「手当」の基本的な考え方
ベトナムでは、「手当」という名称そのものではなく、 支給の実態 によって課税・社会保険の扱いが判断されます。
- 労働の対価として毎月固定で支給されるか
- 実費補填・福利厚生的な性格か
- 出勤・欠勤に関係なく支給されるか
この判断は、残業代の計算基礎やPITの課税対象とも密接に関係します。
代表的な手当と課税・社会保険の扱い
| 手当の例 | PIT | 社会保険 | 実務上のポイント |
|---|---|---|---|
| 役職手当・責任手当 | 課税 | 対象 | 基本給に近い扱い |
| 職務手当・技能手当 | 課税 | 対象 | 労働対価として判断 |
| 昼食手当 | 条件付き | 原則非対象 | 定額支給は注意 |
| 通勤手当 | 条件付き | 非対象 | 実費精算が前提 |
| 住宅手当 | 課税 | 対象 | 駐在員で要注意 |
| 携帯電話手当 | 条件付き | 原則非対象 | 業務利用証明が重要 |
課税対象になる手当の特徴
以下の条件に当てはまる手当は、 PIT・社会保険の対象になる可能性が高い と考えられます。
- 毎月固定で支給される
- 業務内容・役職と直接関係している
- 労働契約書に賃金として記載されている
これらは、残業代の計算基礎(通常賃金)にも含める必要が出てくる点に注意が必要です。
▶ 関連記事:ベトナムの残業代計算基礎とは?
非課税・非保険扱いになりやすい手当
一方で、以下のような手当は、 福利厚生的性格 が強く、原則として非課税・非保険扱いとなります。
- 実費精算の通勤費
- 業務利用に限定した通信費
- 不定期・成果連動型の賞与
ただし、実費精算であることを証明できない場合は、 課税対象と判断されることがあります。
実務でよくある誤り
- 「手当だから非課税」と思い込んでいる
- 毎月定額の昼食手当を非課税にしている
- PITと社会保険の扱いを混同している
これらは、税務調査・労働監査で指摘されやすいポイントです。
給与計算・残業代との関係
手当の扱いは、給与計算全体だけでなく、 残業代の計算基礎や社会保険料、PIT にも影響します。
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まとめ
ベトナムの手当は、「名称」ではなく 支給の実態 によって課税・社会保険の扱いが判断されます。
給与体系を設計する際は、 手当・残業代・社会保険・PITを一体で考える ことが重要です。


