2025年12月10日に可決された改正個人所得税法(Law No.109/2025/QH15)の施行日(2026年7月1日)まで、残り1ヶ月となりました。本法は2007年法(Law No.04/2007/QH12)を廃止・置換するもので、累進税率の簡素化、本人・扶養控除の引上げ、新規課税対象の追加など、駐在員を含む全従業員のPIT計算に直接影響します。
当社では2026年2月27日公開の「2026年7月施行 PIT法改正|企業が今すぐ準備すべき5つのこと」で事前準備を解説しましたが、その後、給与・賃金関連の規定は2026年1月1日から既に適用済みであること、そして下位法令の草案で実務上の追加変更点が判明していることが明らかになっています。本記事は、施行直前に企業が実施すべき最終チェックリストを、草案ベースの先回り準備アクションと合わせて整理します。
1. 改正の核心:5段階累進税率と新控除額(おさらい)
居住者の給与・賃金所得に適用される累進税率は、従来の7段階から5段階に簡素化されます(第9条)。最高税率35%の閾値も月額80百万VNDから100百万VNDに引き上げられ、中間〜高所得層で減税効果が生じます。
| 段階 | 月額課税所得(VND) | 税率 |
|---|---|---|
| 1 | 0 〜 10百万 | 5% |
| 2 | 10百万超 〜 30百万 | 10% |
| 3 | 30百万超 〜 60百万 | 20% |
| 4 | 60百万超 〜 100百万 | 30% |
| 5 | 100百万超 | 35% |
控除額は法律本体ではなく国会常務委員会決議で定められましたが、2026年1月1日から既に適用が始まっています。
- 本人控除:11百万VND/月 → 15.5百万VND/月
- 扶養控除:4.4百万VND/月 → 6.2百万VND/月
2. 草案ベースで先回り準備すべき5つの変更点
新PIT法の実務運用を支える施行政令草案は2026年3月27日に財務省から公表され、パブリックコメントが実施されました。正式公布のタイミングに関わらず、草案に盛り込まれている内容は給与計算ロジックや社内規程に直結する具体的な変更を含むため、今のうちに準備を進めておくことで施行直後の混乱を回避できます。
以下は草案で判明している主要な変更点と、それぞれに対する先回り準備のアクションです。
| 項目 | 現行 | 草案 |
|---|---|---|
| 食事手当(現金支給)非課税上限 | 73万VND/月 | 120万VND/月 |
| 補完年金・任意生命保険料控除 | 100万VND/月 | 300万VND/月 |
| 退職手当・解雇手当 | 労働法上の法定額のみ非課税 | 内部規程に明記すれば全額非課税 |
| 残業代・夜勤手当の割増分 | 割増部分のみ非課税 | 全額非課税に拡大 |
| 副業源泉徴収閾値(10%) | 1回200万VND / 年1000万VND | 1回300万VND / 年1500万VND |
先回り準備のアクション
- 退職手当・解雇手当を全額非課税扱いにできるよう、就業規則や財務規程に支給条件を明文化しておく
- 残業代・夜勤手当の計算ロジックを「割増分のみ非課税」から「全額非課税」に切替えるシミュレーションを実施
- 食事手当・補完年金控除の新上限額を給与計算システムのパラメータとして準備し、施行日に切替可能な状態にする
- 正式公布後の追加修正に備え、給与計算ロジックを設定変更で対応できる体制を整える(ハードコードの回避)
3. 施行直前にやるべき12の最終チェックリスト
7月1日までに完了させたい実務タスク
- 給与計算システムの新5段階税率表への切替確認
- 1月から適用済みの本人控除15.5百万・扶養控除6.2百万が正しく反映されているか再確認
- 食事手当の現金支給上限(120万VND)への切替準備
- 補完年金・任意生命保険料控除(300万VND)の社内規程への反映
- 非課税21項目の最新リストを就業規則・財務規程に反映
- 残業代・夜勤手当の全額非課税処理に向けた計算ロジックの変更
- 退職手当・解雇手当の全額非課税適用に必要な内部規程の明文化
- CCCD(市民ID)と税コードの統合状況の最終確認
- 駐在員のタックスイコライゼーション契約の見直し
- グロスアップ計算式の新税率閾値(100百万VND)への更新
- 従業員向け新ルール説明会の実施または資料配布
- 政令・通達の正式公布の継続モニタリング体制構築
4. 駐在員PITへの影響
居住者判定(183日基準)は変更ありません。居住者扱いとなる駐在員のうち、月額課税所得が60〜100百万VNDの中間〜高所得層では、最高税率35%の閾値が引き上げられたことで減税効果が生じます。一方、非居住者は20%固定で従来通りです。
グロスアップ契約の駐在員:会社負担が軽減
ネット契約(手取り保証)の駐在員については、35%税率が適用される閾値が月80百万→100百万VNDに引き上げられたことで、グロスアップ計算における会社負担額が減少します。給与計算ベンダーまたは社内システムの計算式更新を必ず確認してください。
5. 新規課税対象:デジタル資産・金地金・カーボンクレジット
第3条で課税所得の範囲が拡大され、以下の所得が新たに明示的に課税対象となります。
- デジタル資産(仮想資産)の譲渡:税率0.1%(Circular 32/2026により既に施行済み)
- 金地金の譲渡:税率0.1%(2026年7月1日から)
- .vnドメインの譲渡、カーボンクレジット、Eコマース所得
従業員個人の投資活動にも影響するため、特に駐在員へは情報提供しておくと親切です。
6. 2月公開記事との対比:何が確定し、何がまだ不明か
| 論点 | 2026年2月時点 | 2026年6月時点 |
|---|---|---|
| 5段階累進税率 | 法律可決済 | 確定(7/1施行) |
| 本人・扶養控除引上げ | 2026年内予定 | 1/1から適用済 |
| 食事手当上限120万VND | 議論中 | 草案に明記(先回り準備可能) |
| 残業代全額非課税 | 議論中 | 草案に明記(先回り準備可能) |
| 施行政令・通達 | 草案公表前 | 草案公表済(公布タイミングは継続モニタリング) |
7. まとめ
2026年7月施行の改正PIT法は、累進税率の簡素化と控除引上げにより全体として減税方向の改正です。ポイントは2026年1月から既に適用されている部分と7月1日から適用される部分を切り分け、草案で判明している追加変更点を先回り準備することです。社内システム・規程・契約書を最終確認し、施行直後の混乱を回避しましょう。
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