2026年7月施行 PIT法改正|企業が今すぐ準備すべき5つのこと

2025年12月、ベトナム国会は 個人所得税(PIT)法の改正(法律第109/2025/QH15号) を可決しました。

今回の改正は 2段階で施行 されました。

  • 2026年1月1日〜:本人控除・扶養控除の引き上げ(議決No.110/2025/UBTVQH15に基づき先行適用)
  • 2026年7月1日〜:累進税率の5段階化、非課税所得の拡大など法律全体の施行

【本記事について:2段階の施行はいずれも完了しています】
本記事は改正法の施行前(2026年2月)に「事前準備」の観点で公開したものですが、控除額の引き上げ(2026年1月1日)・累進税率の5段階化(2026年7月1日)はいずれも施行済みです。
現在は「これから準備する」段階ではなく、対応漏れがないかを検証し、必要に応じて遡及修正を行う 段階にあります。以下の各項目は、その確認リストとしてご活用ください。

本記事では、改正の概要ではなく 企業が実務上おさえるべき対応事項 に焦点を当てて解説します。

▶ 改正の全体像はこちら:ベトナム国会、個人所得税法改正を可決 ― 2026年7月1日施行

目次

改正の主なポイント(おさらい)

控除額の引き上げ(2026年1月〜 適用済み)

項目旧(〜2025年12月)現行(2026年1月〜)
本人控除(月額)11,000,000 VND15,500,000 VND
扶養控除(月額・1人あたり)4,400,000 VND6,200,000 VND

控除額は約40%引き上げられ、2026年の課税期間(1月分の給与)から適用 されています。
なお、2025年分の確定申告(2026年初に実施)には旧控除額が適用されます。

累進税率の変更(2026年7月〜 施行済み)

課税所得(月額)旧税率(7段階・〜2026年6月30日)現行税率(5段階・2026年7月1日〜)
〜5,000,000 VND5%5%(〜10,000,000 VND)
5,000,001〜10,000,000 VND10%
10,000,001〜18,000,000 VND15%10%(10,000,001〜30,000,000 VND)
18,000,001〜32,000,000 VND20%
32,000,001〜52,000,000 VND25%20%(30,000,001〜60,000,000 VND)
52,000,001〜80,000,000 VND30%
80,000,000 VND 超35%30%(60,000,001〜100,000,000 VND)
35%(100,000,000 VND 超)
※ 左列の旧税率(15%・25%の区分を含む7段階)は、2026年7月1日以降は適用されません。

税率の段階が簡素化され、中間所得層を中心に 実質的な減税 となりました。

企業が確認すべき5つのこと

① 給与計算システムの税率テーブルが更新されているか

控除額の更新は2026年1月時点で、税率テーブルの5段階化は7月時点 で対応済みである必要があります。

  • 累進税率テーブルが7段階から5段階へ変更されているか
  • 各段階の課税所得の範囲が新しい区分に更新されているか(廃止された15%・25%の区分が残っていないか)
  • 7月支給分以降の給与に新税率が正しく適用されているか、実績値で検証
  • 1月〜6月分(旧税率)と7月〜12月分(新税率)が混在する年度のため、確定申告時の按分処理を確認

Excelで給与計算を行っている場合は、複数シートに分散した計算式の更新漏れ がないか、あらためて点検してください。

② 控除額の適用状況を再確認(1月から適用済み)

本人控除・扶養控除の引き上げは 2026年1月から適用 されています。
以下の点を改めて確認してください。

  • 1月以降の給与計算で新しい控除額(本人 15,500,000 VND、扶養 6,200,000 VND)が正しく適用されているか
  • 2025年分の確定申告では旧控除額を使用しているか(新控除額は2026年課税期間から適用)
  • 給与明細上で従業員に新旧の違いが正しく説明されているか

もし未対応の月がある場合は、1月分まで遡って修正が必要 です。速やかに対応してください。

③ 扶養控除の届出整理・再確認

控除額の変更タイミングは、登録状況を見直す良い機会です。

  • 扶養家族の登録漏れがないか再確認
  • 証憑(出生証明書・婚姻証明書等)の有効期限を確認
  • 新たに扶養対象となる家族がいないか従業員にヒアリング
  • 税務当局への届出書類の準備

扶養控除は 届出なしには適用されません。登録漏れは従業員の手取り減少に直結するため、注意が必要です。

④ 外国人駐在員のグロスアップ契約の見直し

日系企業では、駐在員の給与を グロスアップ(税金を会社負担) で契約しているケースが多くあります。

控除額は1月から、税率は7月から変わったため、会社が負担するPIT額は年内で段階的に変動 しています。特に最高税率35%の閾値が月額80,000,000 VNDから100,000,000 VNDへ引き上げられたことで、高所得の駐在員については会社負担額が減少します。

  • 1月〜6月(新控除額+旧税率)と7月以降(新控除額+新税率)の2パターンで実績を検証
  • 会社負担額の予算との差異を確認し、着地見込みを再試算
  • 本社への報告・予算修正が必要な場合は速やかに着手

グロスアップ計算は複雑なため、年度末の確定申告前に実績ベースで検証 しておくことを強くおすすめします。

⑤ 従業員への説明資料の準備

控除額の引き上げ(1月〜)と税率の変更(7月〜)の2段階で手取り額が変わったため、
従業員からの問い合わせに備えて以下を準備しておくと安心です。

  • 代表的な給与レンジごとの手取り額シミュレーション(改正前 vs 1月〜 vs 7月〜)
  • 従業員向けの簡易説明資料(ベトナム語)
  • 問い合わせ対応のFAQリスト

特にベトナム人従業員は手取り額の変動に敏感です。丁寧に説明する ことで、不要な混乱を防げます。

日系企業がよく見落とすポイント

  • 控除額の先行適用を見落とす:控除額は1月から変更済み。旧控除額で計算し続けていた場合、1月に遡って修正が必要
  • 税率テーブルの更新漏れ:7月以降も旧7段階のまま計算しており、15%・25%の区分が残っている
  • 本社報告の遅れ:税率変更による人件費への影響を本社に報告するタイミングが遅れ、予算修正が間に合わない
  • Excel計算式の更新漏れ:複数シートに分散した税率テーブルの一部を更新し忘れる
  • グロスアップの再計算忘れ:ネット給与は同じでも、会社負担のPIT額が変わることを見落とす

まとめ

今回のPIT法改正は、控除額の引き上げ(2026年1月〜)と税率の簡素化(2026年7月〜)の 2段階施行 で、いずれも施行済みです。
多くの企業と従業員にとってポジティブな変更ですが、施行時期の違いに注意が必要です。

給与計算システムの税率更新、グロスアップの再計算、届出の整理など、 対応漏れがないか年度末の確定申告前に検証 を進めましょう。

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