ベトナムの就業規則|作成義務・必須記載事項・届出手続きの完全ガイド

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ベトナムの就業規則(Nội quy lao động)とは

ベトナムで従業員を雇用する企業にとって、就業規則(Nội quy lao động)は労務管理の土台です。就業規則がなければ、従業員を懲戒処分にすることができません。これはベトナム労働法の大原則であり、日系企業が見落としやすいポイントでもあります。

本記事では、労働法 No.45/2019/QH14(第118条〜第130条)およびDecree 145/2020/ND-CPに基づき、就業規則の作成義務、必須記載事項、届出手続き、違反時の罰則までを実務目線で解説します。

作成義務の範囲(第118条)

就業規則の作成は従業員数に関係なく、すべての使用者に義務付けられています。ただし、従業員数によって求められる形式が異なります。

従業員数作成義務書面の要否届出義務
10人以上あり書面で作成必須あり(労働局へ届出)
10人未満あり書面不要なし

10人未満の場合の注意点

書面での作成は不要ですが、懲戒処分や物的責任に関する事項は労働契約に記載する必要があります。労働契約にこれらの規定がなければ、問題社員への対応が法的に困難になります。

なお、就業規則の正本はベトナム語で作成する必要があります。日本語や英語の併記は認められますが、法的効力を持つのはベトナム語版のみです。

必須記載事項(第118条第2項・Decree 145第69条)

就業規則には以下の9項目を記載しなければなりません。特に項目4と5は2019年改正で新設された項目であり、旧法準拠の就業規則をそのまま使用している企業は要注意です。

No.記載事項備考
1労働時間・休憩時間通常勤務・シフト勤務の区分を明記
2職場の秩序服務規律、出退勤ルール等
3労働安全衛生安全衛生に関する基本ルール
4セクシャルハラスメントの予防・防止2019年改正で新設(Decree 145第85条で詳細規定)
5使用者の財産・営業秘密・技術秘密・知的財産権の保護2019年改正で新設
6労働契約と異なる業務への一時的異動配置転換のルール
7労働規律違反行為及び懲戒処分の形式違反行為と処分を対応させて明記
8物的責任損害賠償の条件・範囲
9労働規律処分権限を有する者懲戒権限者の氏名・役職を特定

届出手続きの流れ(第119条・第121条)

従業員10人以上の企業は、就業規則を省レベルの労働局(So LDTBXH)に届け出る義務があります。手続きの流れは以下のとおりです。

ステップ内容期限
1就業規則を作成し、社内で公布
2労働者代表組織の意見を聴取(組織がある場合)
3労働局へ届出公布から10日以内
4労働局が審査(法令違反があれば通知)受理から7営業日以内
5就業規則の発効届出書類受理日から15日後

届出に必要な書類は以下の3点です。

  • 届出申請書
  • 就業規則本文(ベトナム語正本)
  • 労働者代表組織の意見書(組織がある場合)

懲戒処分との関連 ― 就業規則なしでは処分できない

ベトナム労働法では、就業規則に規定のない事由で従業員を懲戒処分にすることはできません。懲戒処分の種類は第124条で以下の4段階に限定されています。

  1. 戒告
  2. 昇給延期(最長6ヶ月)
  3. 降格
  4. 解雇

特に解雇が認められる事由は第125条で限定列挙されており、主なものは以下のとおりです。

  • 窃盗、横領、賭博、故意の傷害、職場での薬物使用
  • 営業秘密の漏洩、知的財産権の侵害、使用者に重大な損害を与える行為
  • セクシャルハラスメント
  • 処分期間中に同一の規律違反を繰り返した場合
  • 無断欠勤(30日間に5日、または365日間に20日)

違反時の罰則(Decree 12/2022 第19条)

就業規則に関する義務を怠った場合、法人には以下の行政罰が科されます。

違反内容罰金額(VND)
10人以上で書面の就業規則を作成していない10,000,000〜20,000,000
労働局への届出をしていない10,000,000〜20,000,000
労働者代表組織への意見聴取をしていない10,000,000〜20,000,000
就業規則を従業員に周知・掲示していない2,000,000〜6,000,000
規定外の事由で懲戒処分を行った40,000,000〜80,000,000

特に注意すべきは最後の項目です。就業規則に記載のない事由で懲戒処分を行った場合、最大80,000,000 VND(約48万円)の罰金が科されます。

日系企業がよく犯すミス

以下のケースに心当たりがあれば、早急に対応が必要です。

  1. 日本の就業規則をそのまま翻訳して使用している ― ベトナム法の必須記載事項(特にセクハラ防止、知的財産保護)が欠落している可能性が高い
  2. 設立時に作成したまま改定していない ― 2019年改正で新設された項目(セクハラ防止、知的財産保護)が未反映の就業規則は、懲戒処分の根拠として不十分
  3. 労働局への届出を忘れている ― 届出なしの就業規則は発効しないため、懲戒処分の法的根拠を失う
  4. ベトナム語版を作成していない ― 日本語版や英語版のみでは法的効力がない
  5. 懲戒事由を曖昧に記載している ― 「会社に損害を与えた場合」のような抽象的な記載では、実際の懲戒処分時に争われるリスクがある

まとめ

就業規則は単なる社内ルールではなく、ベトナムで従業員を適切に管理するための法的基盤です。特に懲戒処分を行う際は、就業規則に明記された事由に基づく必要があり、就業規則の不備は企業にとって大きなリスクとなります。

チェックポイント

  • 2019年改正の必須項目(セクハラ防止・知的財産保護)が記載されているか
  • ベトナム語の正本が作成されているか
  • 省レベルの労働局に届出済みか(10人以上の場合)
  • 懲戒事由が具体的に列挙されているか
  • 全従業員に周知・掲示されているか

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