ベトナムの労働許可証(Work Permit)とは
ベトナムに駐在員を派遣する日系企業にとって、労働許可証(Giay phep lao dong)の取得は法律上の必須要件です。労働許可証なしに外国人を就労させた場合、企業・本人双方に高額な罰金が科されます。
2025年8月に施行されたDecree 219/2025/ND-CPにより、申請手続きが大幅に簡素化されました。本記事では、労働法 No.45/2019/QH14(第151条〜第157条)および現行最新のDecree 219に基づき、職種区分、必要書類、手続きフロー、免除対象、罰則までを実務目線で解説します。
4つの職種区分(Decree 219 第3条)
労働許可証の申請にあたっては、外国人労働者が以下4つの区分のいずれに該当するかを正しく判定する必要があります。区分によって求められる証明書類が異なるため、最初の判定を誤ると申請が却下されます。
| 区分 | 定義 | 主な要件 |
|---|---|---|
| 管理者(Nha quan ly) | 企業法第4条第24項に規定される管理職 | 定款 + 任命書で証明 |
| 業務執行者(Giam doc dieu hanh) | 部門・支店の直接管理者 | 関連分野3年以上の経験 |
| 専門家(Chuyen gia) | 専門的な知識・技能を持つ者 | 大卒 + 関連2年以上の経験(優先分野は1年以上) |
| 技術者(Lao dong ky thuat) | 技術的な業務に従事する者 | 1年以上の職業訓練 + 2年以上経験、または訓練なし + 3年以上経験 |
専門家の要件緩和(Decree 219の変更点)
旧制度(Decree 152/70)では専門家の経験年数は「3年以上」でしたが、Decree 219で「2年以上」に緩和されました。さらに、政府が指定する優先分野(IT、ハイテク等)では1年以上で足ります。
Decree 219による主な変更点
Decree 219(2025年8月7日施行)は旧制度のDecree 152/2020およびDecree 70/2023を置換し、手続きの大幅な簡素化を実現しました。
| 項目 | 旧制度(Decree 152/70) | 新制度(Decree 219) |
|---|---|---|
| 手続き | 2段階(需要説明報告 → 許可証申請) | 1段階に統合 |
| 求人掲載期間 | 15日以上 | 5日以上 |
| 処理期間 | 20営業日 | 10営業日 |
| 申請先 | MOLISA関与 | 省レベルPPCに一元化 |
| 申請方法 | 書面・電子併用 | 電子申請義務化 |
申請手続きフロー
Decree 219では、従来2段階に分かれていた手続きが1段階に統合されました。以下が現行の手続きフローです。
| ステップ | 内容 | 期限・注意点 |
|---|---|---|
| 1 | 求人掲載(該当する場合のみ) | 申請提出の5日前までに掲載 |
| 2 | 統合申請書の提出(省レベルPPC宛て、電子申請) | 就労開始の60日前〜10日前 |
| 3 | 審査・発給 | 提出から10営業日以内(不承認は3営業日以内に通知) |
| 4 | 労働許可証の受領 | 有効期間:最長2年 |
更新は1回のみ(最長2年)認められます。更新後も引き続き就労する場合は、新規申請が必要です。
必要書類(第18条)
申請に必要な書類は以下のとおりです。全書類について領事認証 + ベトナム語翻訳・公証が必要です。
| 書類 | 詳細 |
|---|---|
| 統合申請書 | Form No.03 |
| 犯罪経歴証明書 | 発行から6ヶ月以内 |
| 健康診断書 | 発行から12ヶ月以内 |
| パスポート写し | 有効期限が十分に残っていること |
| 写真 | 4x6cm、2枚 |
| 雇用関連書類 | 労働契約書、派遣命令書等 |
| 資格証明書類 | 職種区分に応じた卒業証明書、在職証明書等 |
免除対象(第7条)
Decree 219では15のケースで労働許可証が免除されます。日系企業に関連が深い主な免除対象は以下のとおりです。
- 90日未満/暦年の就労(旧制度の30日から大幅に拡大)
- 出資額30億VND以上の出資者または取締役
- ベトナム人配偶者を持ち、ベトナムに居住する外国人
- 政府指定の優先分野の労働者(Decree 219で新設)
免除でも届出は必須
労働許可証が免除される場合でも、就労開始の3営業日前までに省レベルPPCへの届出が必要です。届出を怠ると罰則の対象となるため、免除=手続き不要ではない点に注意してください。
罰則(Decree 12/2022 第32条)
労働許可証なしに外国人を就労させた場合の罰則は、企業・本人双方に科されるため注意が必要です。
| 対象 | 罰金額(VND) | その他 |
|---|---|---|
| 外国人本人 | 1,500万〜2,500万 | 国外退去処分 |
| 企業(1〜10人) | 6,000万〜9,000万 | – |
| 企業(11〜20人) | 9,000万〜1億2,000万 | – |
| 企業(21人以上) | 1億2,000万〜1億5,000万 | – |
日系企業が注意すべきポイント
以下は申請却下や遅延の原因として頻出するケースです。赴任の4〜5ヶ月前から準備を開始してください。
- 犯罪経歴証明書の取得遅延 ― 日本での取得に2〜4週間、さらに領事認証に時間がかかるため、最初に着手すべき書類です
- 書類の有効期限切れ ― 犯罪経歴証明書(6ヶ月)、健康診断書(12ヶ月)の有効期限に注意。書類準備中に期限が切れるケースが多発しています
- 領事認証の不備 ― 日本で発行された書類はすべて領事認証が必要です。認証なしの書類は受理されません
- 職種区分と書類の不一致 ― 「専門家」で申請したのに大卒証明がない、「管理者」で申請したのに任命書がない等、区分と証明書類の整合性を必ず確認してください
- 経験証明の準備不足 ― 親会社からの英文在職証明書を用意し、領事認証 + ベトナム語翻訳・公証まで完了させる必要があります
健康診断書については、ベトナム国内の指定医療機関で受診するのが最も確実です。日本の病院で取得した診断書は、形式が異なるとして受理されないリスクがあります。
まとめ
Decree 219/2025の施行により、ベトナムの労働許可証申請は手続きの統合、処理期間の短縮、電子申請の義務化など、大幅な簡素化が実現しました。一方で、必要書類の領事認証やベトナム語翻訳といった実務上のハードルは変わりません。
実務チェックリスト
- 職種区分(管理者・業務執行者・専門家・技術者)を正しく判定しているか
- 犯罪経歴証明書の取得を赴任4〜5ヶ月前に開始しているか
- 全書類の領事認証 + ベトナム語翻訳・公証が完了しているか
- 就労開始の60日前〜10日前に電子申請を提出できるスケジュールか
- 免除対象の場合でも、就労3営業日前までの届出を行っているか
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